
あなたの芯を作っている価値観、
あなたの人生のお供になる言葉、
いくつ知っていますか?
なんとなく生きていたり、
また何かに夢中になっているときに、
ついつい忘れてしまった『何か』に気付かされます。
そんな大切なことを思い出させてくれる一冊があります。
日本人として、忘れてはならない大切なことに気付かされます。
そして長田さんの優しい言葉が、すーっと身にしみるのです。
現代を生きる『若者』の一人として、
忘れてはならない価値観・言葉をもう一度考えてみたいと思います。
『再』という言葉の大切さをもう一度考える

「再テスト」「再試」「再考」「再訪問」「再読」などなど・・・・
『再』という言葉を聞くと『やり直し』などのネガティブな意味合いを思い浮かべます。
再というときは、
前からあったものをもう一度繰り返すというふうにとらえられがちですが、
そうではなくて、新しい始まり、新たな意味というものを、
いま現在のなかにもう一度みちびきいれようという、
積極的な意味合いをつよく含めて使ってきたように思います。
長田弘 『なつかしい時間』
『新しい始まり』『新しい意味』
なかなか『再』という言葉からそのような意味合いを見出せませんが、
ビジネスの現場でも、この『再』という言葉は大切な意味を持ちます。
どんな斬新なアイデアも、すでにあるものの組み合わせです。
それは既存のアイデア、言葉をもう一度考え直すことで、
新しい意味、違う価値を見つけることができます。
そして、その組み合わせでアイデアは生み出されるのです。
今は失ってしまった言葉、普段は考えない言葉や考え方を、
いまこそ『再考』してみたいものです。
以前とは違って、新しい価値・意味を見つけることができます。
『真のコミュニケーション』を考え直す

今ほど『コミュニケーション能力』が必要とされている時代ありません。
本屋を散歩してみると、コミュニケーションに関する本は無数にあります。
その多くが『営業トーク』や『恋愛トーク』などのスキルを教えるものです。
いわゆる、『発信力』に焦点を合わせています。
さらに現代は『発信』の時代です。
Twitter、Facebook、InstagramなどのSNS、ブログが発展している時代、
誰もが発信者であり、編集者です。
そんな時代だからこそ『受信力』が求められると長田弘さんは言います。
発信されることの大切さが強調されればされるほど、
逆に、いつかすっかり衰えてきているように思えるのが、
「受信する」ちからです。
受信するちからを、自分のうちに、
生き生きともつことができるように、
もっと苦心しなければならない、と思うのです。
そうでないと、大切なものを自分に受け止めて、
自ら愉しむということが、いつのまにかできないままになってしまう。
長田弘 『なつかしい時間』
ハッとさせられました。
ビジネスの現場でも、飲み会や友人との会話も、
気がつけば発信することだけに意識してしまっています。
ビジネスの現場でも、発信は重要です。
会議やプレゼン、上司や部下への報告、発信力で能力を判断されることも確かです。
さらに、恋愛においても、発信して自分をアピールしたい気持ちも分かります。
けれど、それらの発信を支えているのは『受信』するちからです。
社員の気持ち、考え方、
恋愛では相手の気持ち、考え方、
それをいかに受信できるかで、結果は大きく変わってきます。
発信力を磨くことも大切ですが、いつのまにか受信を忘れている。
今の若者に特に必要なのは、他者の気持ちをしっかりと受信し、
それを受け止めてあげられるような力なのではないかと考えさせられます。
『退屈』の価値を考え直す

退屈な時間ほど辛いものはありません。
むしろこれだけモノがありふれて、ネットが普及しているいま、退屈は少なくなってきています。
とくに私も、仕事をしていなければ落ち着きません。
無駄な飲み会、退屈な会話、何もすることができない時間、
そんな『退屈』な時間が、もっとも必要ない時間だと思っていました。
そして同時に、そんな生活に、窮屈さ、ストレス、閉塞感を感じてしまっています。
「退屈」を、ゆっくりした時間、
ゆったりした時間としてすすんで捉えかえすことができれば、
「退屈」のない多忙、興奮のみをよしとする日々の窮屈さに気づくはず。
長田弘 『なつかしい時間』
刺激のない日々、退屈な時間、
実はそういう時間が、私たちの心を豊かにしているのかもしれません。
時間や目標に追われる日々、ストレスと戦う日々、
いきなり暇な時間を作ると、落ち着かずにそわそわするものですが、
思い切って『退屈』してみるのも、いい方法かもしれません。
『言葉』をどれだけ持っているか、いま問われる

『世界は言葉でできている』そんなテレビ番組がありました。
本当に、その通りだと思います。
あなたは大切な言葉をいくつ持っていますか?
言葉むなしければ、人はむなしい。
語彙というのは、心という財布に、
自分が使える言葉をどれだけもっているかということです。
その言葉によって、いま、ここに在ることが生き生きと感じられてくる。
そういう言葉を、どれだけ持っているか。
長田弘 『なつかしい時間』
言葉はなにも、他者と会話をするときだけに使うものではありません。
一番大切だと思うのは、自分と会話するときの言葉です。
考えるときも、悩むときも、すべて言葉を使っています。
落ち込んだとき、辛いとき、くじけそうなとき、夢を諦めそうなとき、
自分自身にどんな言葉をかけられるか。
それによって、その後の道は大きく変わってきます。
名言集が必要とされているのも、そんなときにお伴してくれる言葉を持つことが大切だからです。
知らなければ、言葉は使えません。
知っているだけで、自分を励ます言葉はたくさんあります。
そんな言葉をどれだけ貯金できているか。
これだけ情報が簡単に手に入る時代、漢字や意味はすぐに調べられる時代、
間違いなく語彙力は低下しています。
モノは溢れていますが、ココロは貧しくなる一方です。
あなたにとって大切な言葉は何か、
もう一度見直す時期かもしれません。
『使い方』の哲学

お金の「使い方」から、言葉の「使い方」、時間の「使い方」、人生の「使い方」まで。
いまは「使い方」がずさんになって、そのことが、
おたがいの心のありようを粗雑にしているということを考えます。
長田弘 『なつかしい時間』
私たちは、手に入れることに躍起になって、使い方を学んでいません。
せっかく得たお金も浪費し、人を喜ばせるために使えない。
時間が欲しいといっても、時間を得ればどうしていいか分からない。
そして特に、言葉の使い方はわかりません。
そのお金は、何のために使うのか?
その時間は、何のために使うのか?
もう一度考え直したいものです。
お金や言葉は貯金することができても、時間だけは貯金できません。
使わなければ、ただただ過ぎ去っていくだけです。
そんな時間も大切ですが、未来を分けるのは、時間の使い方です。
『本に親しむ』という習慣

本が読まれなくなった時代と言われて数十年、いまなお同じ状態です。
むしろ若い世代の人たちは、生まれた時から読書離れです。
最近は「Kindle」の影響もあり、本が読みやすくなっています。
本を開くということは、心を閉ざすのではなく、心を開くことです。
長田弘 『なつかしい時間』
本を開くと、知らない世界が広がります。
ビジネス書でも、小説でも、それぞれに世界があります。
そして書かれている言葉1つとっても、色んな意味があります。
読み手によって、そして読む時期や気持ちによって、受け止め方は変わります。
本は、その人が人生をかけて研究した知恵が書かれています。
人の一生は限られていますが、その人の知恵・価値観を豊富にしてくれているのは本です。
本を読んでいる人は、どの分野の人であっても、魅力的です。
失われている本を読む習慣、いまこそ見直したいものです。
『空を見上げる』『海を見に行く』『遠くを眺める』

都心に住んで、日々の仕事に追われる。
相棒はパソコンとスマートホン。
そんな日々が続くと、空を見上げることを、海を見に行くこともなくなります。
いつのまにか、風景は主役でなく、どうでもいいものになっています。
戸外へ出かけていって、風景をじっと見つめることを覚える。
そうして、じぶんがこの世界の一部であることをまなんでゆく。
そうやって、風景のなかにじぶんのあり方を見い出すことで、
人は、日々の生き方の価値観というべきものを作ってきました。
長田弘 『なつかしい時間』
風景といっても日常の風景、夜景、夜空、海、さまざまなものがあります。
そんな風景を見たとき、いつもの悩み、閉塞感はなくなり、
心がすーっと晴れるものです。
風景は、人にとってはいつも大切なものです。
風景を考えると、いつも地元の風景が頭に浮かびます。
故郷もまた、風景によって作られています。
風景を見る習慣を、いまこそ取り戻したいものです。
特に、自分がどこへ進むべきか、無気力、希望を失ったとき、
風景をじっと見つめていると、自ずと答えは出て来ます。
進むべき道を、指し示してくれます。
『言葉にする』ことの意味を見直す

言葉を書く、言葉で表すということは、
言葉にしたこと、できたことを明らかにすることであると同時に、
言葉にできない、言葉で表せないことを明らかにすることでもあります。
長田弘 『なつかしい時間』
あなたはの夢、考え方、気持ち、目標、感じたこと、
どれだけ言葉にしていますか?
『夢は目標は書けば実現する』というのは有名な成功哲学です。
受験生も、営業マンも、起業家も、成功している人は必ず言葉にしています。
これは、一貫性の法則に基づいて、
書いた通りの人間になろうとする人間心理が大きく関係しています。
それ以上に、書くことで言葉にできないことを明らかにできることです。
言葉にできないけど、大切な感情、感じることはたくさんあります。
1つ1つ想いを言葉にしていくことで、
あなたの進む道、やりたいこと、やるべきことが明らかになります。
ノートとペンが1つあれば、誰でも今から始められます。
何を書くのも自由です。
日記でもいいし、夢を書くノートでもいいのです。
そしてもう1つ日本人の習慣として『言葉にしない』というものがあります。
特に男性は、『男のくせにベラベラとしゃべらない!』と言われて育てられました。
けれど、多くの場面では言葉にしなければ伝わらないし、
言葉にしなければ自分の夢や目標を叶えられません。
日々、言葉にする習慣を身に付けたいものです。
『習慣』とは何か?

いまでは『習慣』という言葉は、『悪習』という意味で捉えられがちです。
タバコ、お酒、ギャンブル、女、麻薬、怠け、さぼり、
すべて習慣です。
辞めたいけど辞められない、惰性でずるずる続けているものです。
でも、本来の習慣とはこういうものではありません。
あなたの人生をつくる、たった1つの確かなものなのです。
秩序や規範にではなく、
人の個性、社会の個性、文化の個性を、
ゆっくり確かにしていく「習慣」の力、
日々をゆるやかにささえるものとしての「習慣」の力に、
もっともっと自覚的でありたい。「習慣」は人を裏切らないからです。
長田弘 『なつかしい時間』
あなたがどんな夢や人生、目標を描いていても、
それを達成するのは『習慣』でしかありません。
習慣が人をつくり、未来をつくります。
日々の習慣を見直してみると、思いがけない習慣に気づきます。
実際に思い描いている未来とは懸け離れた習慣をしていることがあります。
あなたの日々の習慣は、なんのためにしていますか?
あなたのその習慣は、どんな人間を作ろうとしていますか?
本来の習慣とは、唯一確かな力強いものです。
習慣を制すれば、人生を制することができます。
反対に、一度習慣にしてしまえば、
惰性で続けることができるため、物事の達成が容易です。
いまこそ「習慣の力」を取り戻したいものです。
失われてきた『対話』を考える

独立して仕事をすると、どんな人とでも、仲間とでも、つい討論をしてしまいます。
そんな会話には、議題やゴールが定められています。
もう1つの対話は、腹を割って本音で話すことです。
でも、本来の『対話』の時間というのは、そういうものしかないのでしょうか。
対話の時間というのは、
そこでおたがいの言葉を手掛かりに考える時間を持つこと、
確かめながらゆっくりと考える時間を共にし、
分け合う方法であるということでした。
長田弘 『なつかしい時間』
私たちはそういう会話を、無駄な会話と認識するようになりました。
結果が出ない会話、ゴールがない会話にイライラするのです。
でも、思い返してみると、自分を豊かにしてくれた会話は、
おたがいの言葉を手掛かりに、ゆっくりと共に考える会話でした。
議題もゴールもなく、ただただゆっくりと対話する。
そんな会話は、失われつつあります。
大切な家族と、仲間と、友達と、恋人と、
ゆっくと共有できる対話をしてみたいものです。
最後に・・・
![]() なつかしい時間 [ 長田弘 ] |
長田弘さんの言葉はどれも優しく、大切なことを気づかせてくれます。
今は亡き長田弘さんに、心から感謝したいと思います。
読書は素晴らしいものです。
こういう大切なものを、時々思い出させてくれます。
1000円以下で、こんな本が読めるのは、とても幸せな時代です。
小さなことにフォーカスすること、小さなことに感動すること、
忘れた感情を取り戻すこと、大切なことばを思い出すこと、
どれも、本がもたらしてくれる恩恵です。
あなたの感性を豊かに。ぜひ、読んでみてください。